第3回「德川賞」
第3回「德川賞」については、下記の著作を受賞作とすることに決定し、平成17年11月3日(祝)霞会館にて授与式を行いました。
本年は飯島千秋氏の『江戸幕府財政の研究』(吉川弘文館)と、秀村選三氏の『幕末期薩摩藩の農業と社会』(創文社)の二書が厳しい選考過程をへて選定され、両先生の御出席を頂いて盛大な授与式が行なわれましたことは、本当に喜ばしいことです。
両著ともに、実証的な優れた御研究の成果であり、今後の日本近世研究の確りとした基盤をなすものと、選考に当たられた諸先生の一致したご意見であり、授賞式に頂いた両先生の御講演も内容の深いものでした。
明治以前の日本近世は、なにか遠い昔のことで、現代の日本とは無関係のように感じられる方も多いと思いますが、知れば知るほど現代の日本と深い繋がりがあり、私達日本人の生き方の根底にあるものは、近世(江戸時代)に深く根づいていることに気付かされます。同じように世界の人々も、それぞれの長い歴史の中から生まれた文化の中で育ってこられた訳で、これから益々グローバル化する世界に入ってゆく私達は、まず自分達の文化を知ると同時に、他の文化に対する公平で深い理解を持つことがますます大事なことになります。
德川賞の選定規準の一つに「実証的な研究」であることがあります。過去の時代に対する評価は、その評価を行なう側の時代の性格によって、大きく変わります。しかし実証的な研究成果はそのような時代の流れに拘らず、常に次の世代による研究の基盤となって行くものです。
そのような観点から「德川賞」が少しでも貢献出来れば幸いです。
選考に当たられた諸先生方の大変な御努力に心より感謝申し上げます。

第三回「德川賞」受賞者
左より速水融選考委員長、飯島千秋氏、秀村選三氏、德川恒孝理事長
1.受賞著作
『江戸幕府財政の研究』
著者: 飯島 千秋
発行: 吉川弘文館
『幕末期薩摩藩の農業と社会』
著者: 秀村 選三
発行: 創文社
2.選考過程
本年7月に第1回選考委員会を開催し、対象期間である平成16年に刊行された日本近世に関する著書より36点を第一次候補に選定し、8月の第2回選考委員会に於いて次の10点を最終候補に絞り、議論を尽した結果、全員一致で上記2点の著作を第3回「德川賞」受賞作とすることに決定しました。
『江戸幕府財政の研究』
著者: 飯島 千秋
発行: 吉川弘文館
『江戸武家地の研究』
著者: 岩淵 令治
発行: 塙書房
『近世都市騒優の研究』
著者: 岩田 浩太郎
発行: 吉川弘文館
『近世日蘭貿易史の研究』
著者: 鈴木 康子
発行:誌文閣出版
『筑前御抱え絵師』
著者: 小林 法子
発行: 中央公論美術出版
『都市の中の絵』
著者: 玉蟲 敏子
発行: ブリュッケ
『日本近世地誌編纂史研究』
著者: 白井 哲哉
発行: 思文閣出版
『幕末期薩摩藩の農業と社会』
著者: 秀村 選三
発行: 創文社
『幕末政治と薩摩藩』
著者: 佐々木 克
発行: 吉川弘文館
『琉球王国の外交と王権』
著者: 豊見山 和行
発行: 吉川弘文館
第3回「德川賞」 選考要領
1.選考対象
- 平成16年1月1日より同年12月31日までに日本語にて刊行された、日本近世に関するすぐれた研究著書
- 日本近世の範囲は德川時代を中心に、織・豊時代および明治初期を含むものとする
- 日本近世における政治・経済・行政・外交・生活・文化・思想・芸術・宗教・教育・建築・医学・言語等全分野および周辺分野、またはこれ等多くの分野を横断した総合的な領域についての実証的かつ顕著な研究成果の著書
- 編纂書・注釈書・辞書・調査報告書等は含まない
2.選考委員(敬称略)
委員長 速水 融
文化功労者・日本学士院会員・慶應義塾大学名誉教授
小林 忠
学習院大学教授
高埜利彦
学習院大学教授
竹内 誠
江戸東京博物館館長
松尾正人
日本学術会議会員・中央大学文学部長
3.表彰
賞状ならびに副賞100万円