第6回「徳川記念財団コンクール」德川賞佐塚

表彰活動

コンクール in 静岡 第6回「徳川記念財団コンクール」

德川賞(最優秀賞)

「情熱、謙虚、自己管理」

静岡サレジオ中学校2年  佐塚 陽介

 

 私は、日本史が大好きだ。駿府城公園は、私に日本史の面白さを教えてくれた場所の一つである。小学生の頃、坤櫓や発掘調査の行われている天守台跡に、何度も通ったことを覚えている。行けば行くほど、駿府城と徳川家康公の魅力を知ることができた。

 元々、私は家康公があまり好きではなかった。ずる賢い野心家「狸おやじ」のイメージを持っていたからだ。このようなイメージを持つ人は多い。その証拠に、戦国武将の人気ランキングを見ると、天下人でありながら上位五位に入っていないことも多い。だが、家康公は他の武将にはない個性や魅力を十分に持ち合わせた武将だと思う。また、彼の生き様を通して得られる学びには、どこか私達の人生に知恵を授けてくれるものがある。

 家康公の魅力は、大きく分けて三つある。第一の魅力は、彼の政治にかける情熱である。家康公は、群書治要や吾妻鏡といった歴史書を読み、人一倍政治の勉強に励んでいた。特に群書治要には統治の知恵が多く記されており、家康公はそれを重視。平和事業の一環として出版事業に精を出した。高齢でありながらも、勤勉で政治に熱心だった家康公。そんな彼の情熱は、嫌というほど戦乱を経験してきたからこそ持ち続けることができたと言えるだろう。

 第二の魅力は、彼の謙虚さである。家康公は、自分がリーダーであることを常に意識していた。自分の行動がどれだけ政治に影響を与えるのかを十分理解していた。家康公はたいそうな倹約家だったという。白米よりも質素な麦飯を食べ、居城の装飾品を控えるなどの行為は、少しでも無駄な支出を抑えて政治にお金を回すための彼の努力の表れであった。

 特に「毎日麦飯を食べていた」と言う逸話は、家康公が常に謙虚であったということを証明しているエピソードではないだろうか。

 これこそがリーダーのあるべき姿だと思うのだが、最近のニュースはかなり悲惨なものが多い。昨年の参院選で裏金が働いていたという事件や、千代田区の懇談会で提供された高級料理が全額公費で賄われていたという話を耳にした。今日、家康公のような政治家は少ないのかもしれない。

 第三の魅力は、彼の自己管理能力の高さである。家康公は、体の具合が悪い時は自分で薬草を調合して服用していた。原材料はあの駿府城の北にある薬園から調達。調薬を趣味にしていたと言うからびっくりだ。

 もう一つ、趣味として家康公は、鷹狩りが大好きだった。彼は「鷹狩りは、自ずから病などが起きるのを防ぐことができる」と語っていた。日頃の運動が健康に関わることを知っていたようだ。運動をすると、セロトニンと言う物質が脳から分泌される。セロトニンは精神を安定させる効果を持つ。リーダーなど大役を任された人の中には、責任感に押し潰されて気を病んでしまう人も多いと思う。だからこそ適度な運動は大切なのかもしれない。

 「情熱」「謙虚さ」「自己管理能力の高さ」私が感じた家康公の魅力である。言い換えれば、これらの魅力は家康公を構成した三つの要素と言ってもよい。彼が戦国時代の覇者になれたのは、最後までこの三要素を備えていたからだと思う。織田信長公、豊臣秀吉公も強さでは家康公に匹敵した人物であったが、謙虚さに欠けていた。そのために信長公は途中で斃され、秀吉公は長期政権を築けなかったのかもしれない。

 覇者・家康公に学ぶことの意義は大きい。私達は時に、仕事や勉強にかける情熱を失ったり、謙虚さを失い天狗になってしまったり、無理をして体を壊してしまうことがある。そんな時こそ家康公を思い出したい。情熱を、謙虚さを、自己管理を絶やさないようにしていきたい。少しでも彼に近づけるように。

                                          (了)