特別展「徳川将軍家ゆかりの人形とひな道具」によせて 徳川家のお雛祭り

昭和18年のお雛様飾りの様子

展覧会会場の様子

現在、徳川宗家のお雛様やひな道具類は、十三代御台所天璋院様や十四代御台所静寛院宮様のものを中心に、十六代夫人泰子（ひろこ）様や十七代夫人正子（なおこ）様のお人形やお道具類が伝来しています。

　今回の特別展（詳細はHP「お知らせ」を御覧ください）では、天璋院様や静寛院宮様の人形とひな道具を中心に、泰子様、正子様が所持した御所人形やひな人形、ひな道具、遺筆など約100点を一堂に公開いたしました。

　大奥について書かれた本などを読みますと、幕末の江戸城大奥では、三月朔日より四日まで雛祭りが行われ、十二段飾りに古今雛や大形の次郎左衛門を配置良く並べ、夫婦人形の衣装は毎年新調したと伝えられています。また雛段は何ヵ所にも飾られ、飾り付けには一週間を要したと言われています。

　母が嫁いだ頃は、出入りの大工がいて、お雛様の頃には、大工が七段飾りの台を組み立て、その後女性達が賑やかに楽しみながら飾っていたようです。家達（いえさと）様（十六代）や家正様（十七代）がいらした頃は、今よりも多くの人形や道具があったようで、古いおひな様の写真を見ますと、その当時の様子が偲ばれます。今では家に畳の部屋もないので、滅多に飾ることはありません。私も家でお雛様の飾ったのを見たのは、三〜四回位だったと思います。たまに出していた時は私も手伝い、子供の頃は身が軽かったので、七段飾りの上にのぼり、お雛様の飾り付けをしたということです。お雛様というと、飾り付けのために出すのも、終わった時に仕舞うのも大変で、雛段も大きいので部屋が使えなくなるというイメージが残っております。

　財団の設立にともない、久能山東照宮博物館等にお雛様を飾るようになって、ますます家では飾らなくなりましたが、多くの人に、徳川宗家に伝わるお人形やお道具を見ていただけて、幸せなことかもしれません。

徳川典子（�ｺ川記念財団学芸員・徳川宗家十八代次女）