第6回「徳川家康公作文コンクール」

�梵�賞（最優秀賞）

　私は、信長・秀吉・家康の中で織田信長が一番好きでした。なぜなら、絶対不利な状況であった桶狭間の戦いに勝ち、長篠の戦いでは鉄砲を使って時代を変える戦いを行うなど、戦国時代を武力で統一していった信長の強さが好きでした。家康も岡崎市の郷土の偉人と知っていましたが、これまではあまり好きではありませんでした。しかし、六年生になって社会科の学習で、徳川家康について学びました。そして、私の住む城南学区にも関係している家康のみ力を知り、私は家康に対してとても考えが変わりました。

　城南小学校のすぐ近くに浄珠院というお寺があります。授業で、そのお寺に見学に出かけました。浄珠院では、おしょうさんが、三河一向一揆のことを熱心に語ってくれました。三河一向一揆とは、家康が岡崎にいた時代、一向宗の信者と戦った出来事です。その時、浄珠院は家康の本陣となり、家康もここに来て戦ったそうです。そして、最後は一揆側についた武士たちが降伏し、浄珠院で和議が行われました。おしょうさんからこの話を聞いた時、ただのお寺と思っていた浄珠院がとてもすごい場所だと思いました。さらに、お堂の中には家康や後の将軍たちの位はいがありました。それらの位はいを見て、私は家康がとても身近に感じられました。

　何より私の心をとらえたのは、家康が敵になった家臣を許したことです。三河一向一揆では、その信者の中に家康の家臣もいました。だから、家康は一揆側についた家臣とも戦い、とても苦しい戦いが続いたそうです。しかし、家康は敵になって自分を打ちとろうとした家臣たちを、家康は許してあげました。その話を聞いて、私は家康はなんて心の広い武将だと思いました。信長は延暦寺の焼き打ちなど、自分の敵対する勢力は神も仏も関係なくほろぼしてしまうけど、家康は自分に敵対した者でも、信仰心を認め、許してあげるなんて、とても人の心を大切にした武将だと思いました。許してもらい再度家康に受け入れられた家臣たちは、家康のことを心から信頼したと思います。

　浄珠院で三河一向一揆の話をおしょうさんから聞いて、家康が家臣たちのことをとても理解し、家臣たちをとても大切にしていた武将だったことが分かりました。

　家康の歴史を調べると、三河一向一揆だけでなく、家康の人生には何度もピンチがありました。特に、三河一向一揆、三方ヶ原の戦い、伊賀越えは家康の三大危機と言われています。

　三方ヶ原の戦いでは、家康は当時一番強かったと言われる武田軍と戦いました。兵力の差がある中で、家康軍は勇かんに戦いましたが、武田軍の大軍に大敗をしました。家康は絶体絶命の状況で浜松城に逃げ帰ると中、武田軍に追いつかれてしまいました。その時、家康の身代わりになってうち死にしたのが、夏目吉信です。夏目吉信は、一向一揆の時に一揆側についた家臣で、その家臣が家康の最大のピンチの時、命をかけて家康を守ったのです。

　三方ヶ原の戦いで、家康は武田軍にほろぼされてもおかしくなかったのに、何とか切り抜けることができたのは、やはり家康には夏目吉信のような心の底から家康を信頼し、最後まであきらめず命をかけて家康を守った家臣がいたからだと思いました。

　また、長篠の戦いを学習した時、長篠合戦図屏風の絵で家康軍の戦いを確認しました。家康軍は一番前にかまえ、その家臣たちは馬防柵の前で戦っていました。一番強いと言われていた武田軍の騎馬隊をおそれず、勇ましく戦う姿がありました。その武将たちの中には、城南学区の上和田町出身の大久保忠世や忠佐もいます。その事実を知った時、何だか私は、うれしく思いました。そして、家康の家臣たちが命をかけて最前線で胸を張って戦っている姿に、とても力強く家康軍は固い絆で結ばれていると思えました。

　徳川家康の家臣でも、古くから家康に仕えている家臣だけ三河武士と呼ばれています。私はなぜそう呼ばれるのかなと思いました。しかし、三河一向一揆の時の家康の家臣への態度、三方ヶ原の時の夏目吉信の姿、そして長篠の戦いでの大久保氏の勇ましさなどを知って、三河武士たちは家康を信頼し、勇ましく戦っていることを知りました。そして、どんなピンチや試練があっても、それを家康といっしょに乗り越えていける固い絆があったと分かりました。その固い絆こそ、徳川家康の本当の強さだったのではないかと思いました。

　私の通っている城南小学校でも、絆という言葉を大事にしています。家臣との絆を大切にしていた家康は、だから最後に全国統一することができ、信長や秀吉ができなかった長きにわたる徳川幕府の基礎を作ることができたのだと思います。

　江戸幕府を開いた後、家康は本多正信という家臣をそばにおいて政治を行っていました。この家臣もまた、三河一向一揆の時、家康と敵対した家臣だと、先生が教えてくれました。

　徳川家康のことを勉強して、家康はとにかくがまん強く待ち続けて天下をとったとよく言われていますが、私は家康は家臣に支えられ、信頼されて、そして望まれて天下をとった人物だと思いました。徳川家康の本当の強さの秘密を知って、私はとても家康を見直しました。そして、何より家康の家臣たちとの絆が、戦国時代を明るく照らす太陽だと思います。浄珠院や大久保忠世など、身近で家康を感じられて、浄珠院はすごくすばらしく、家臣でも家康との絆が大きい人なら、浄珠院と同じくらい、すばらしい人だと思いました。家康と家臣たちの絆は、私たちの身近でも、すごく大切なものなのだと家康は教えてくれました。