企画展「歴史をつなぐ天璋院の用箪笥」

■展示構成
　　 第１章　天璋院の生涯
　　 第２章　愛用品にみる生活
　　 第３章　歴史をつなぐ

「歴史をつなぐ天璋院の用箪笥」展開催にあたって

　 この度、長い間徳川の家に伝えられてきた「天璋院様の御箪笥」に収められてきた色々な御手紙、和歌などの一部を公開し、皆様に御覧頂く事となりました。
　私がまだ会津松平家の小学生低学年でしたからもう70年近く昔のことですが、松平の家から歩いて５分ほどのところにあった祖父徳川家正の家によく遊びに行きました。「遊びに」と言うよりは、祖父母の家に行けば、美味しいお菓子が食べられる、という誠に情けないような知恵を働かせたものだったと思いますが、いつも２階の和室に座って、ニコニコとお菓子を出してくれた祖母正子(なおこ)の後ろにあった箪笥が「天璋院様の御箪笥」でした。
　なにしろイタズラ盛りのことでしたから、何回か引き出しを開けて見ていましたが、ぎっしりと短冊が詰まっており、もとより何方が書かれたものかも解りませんし、大体一字も読めないのですから、どうもここにはお菓子は入っていない、と確認してからは、御箪笥にはすっかり興味を失ってしまいました。
　そんな小学生時代から、中学時代に徳川家に養子に入ってからも、まあ、やる事は山のようにあり、留学し、就職し、結婚し、子供が出来て海外勤務も２回あって…と人並みのサラリーマン生活を過ぎて、やはり�ｺ川家の当主として「家」の為になることをしなければいけないと財団を設立しましたが、家康公から慶喜公までの幕府時代にどうしても集中しがちでした。財団設立時に明治からの公爵時代も財団の研究対象にする規約としましたが、明治に繋がる品々を展示するのは今回が初めてのことになります。
　大きな時代の変わり目を乗り越えて�ｺ川の家を支えた女性たちの姿を心に描いて頂ければ幸いです。

　　　　平成二十八年一月

　　公益財団法人　�ｺ川記念財団　理事長
　　　　　　　　　　　　�ｺ川宗家18代　　　　�ｺ川　恒孝