日光山輪王寺宝物殿　展示

2012年6月15日（金）〜8月8日（水)
４代将軍家綱の絵画

　徳川家綱は、寛永18年（1641）3代将軍家光の長男として江戸城本丸に生まれました。慶安4年（1651）4月20日、父家光が48歳で亡くなると、数え11歳にして将軍宣下をうけ、4代将軍に就任します。

　幼い将軍の誕生により、由井正雪らによる倒幕未遂事件（慶安の変）が発覚するなど、将軍就任当初は政情不安の感もありましたが、酒井忠勝・松平信綱・阿部忠秋ら先代の遺臣の支えや、家綱の叔父で将軍輔佐となった保科正之の後見を得て、幕府の支配体制はより強固なものとなっていきます。その治世では、養子制限の緩和や殉死の禁令など、大名統制における一連の緩和策を実施し、これまでの武力に頼った武断政治から文治政治へという転換の時期を迎えます。加えて、老中や若年寄の支配分掌を明確化し、勘定奉行機構を確立するなど全国支配体制の一元化が図られました。

　家綱の治世は延宝8年（1680）までの29年に及びますが、生来病弱であったこともあり、政治を主導することは叶わず、幕閣による協議の上で政治運営が執り行われました。その一方で、家綱は絵事や茶の湯などの文化への造詣を深めたことが知られています。とくに画技においては、御用絵師を招いて絵を描かせ、自らも絵筆をとりました。当時、御用絵師を勤めていたのは、江戸狩野派の基礎を築いたことで有名な狩野探幽とその弟の安信、甥の常信らでした。特に探幽は、寛文2年（1661年）に画家としての最高位である法印の位に登りつめており、その円熟した画風は、将軍の画技にも影響を与えたことでしょう。

　このたびの展示では、武断政治から文治政治への転換を見た４代将軍家綱の自筆の絵画をご紹介します。この展示を通じて、幕府機構が整備され安定へ向かう時代を生きた家綱のひととなりを感じていただければ幸いです。

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