日光山輪王寺宝物殿　展示

2011年2月10日（金）〜4月11日（水)
徳川将軍家伝来の絵画

　徳川将軍家には歴代将軍画像のほか、将軍自筆の絵画や幕府・諸藩の御用絵師の作品などが多数伝えられています。現在、一般的に「御用絵師」「お抱え絵師」という呼称は、江戸時代における将軍家や大名家に仕えた絵師に用いられており、その中心に狩野家がありました。狩野派の絵師は初期の段階から当時の権力者と密接な関係にあり、狩野派の祖・狩野正信とその子元信は足利将軍家の御用をつとめました。また、元信の孫である永徳(えいとく)は織田信長・豊臣秀吉の画事をほぼ一手に受け持ち、その後、天下の形勢が徳川家康に傾くと、永徳の弟長信はいち早く家康に御目見し、江戸に移り住んだといわれています。そして、この徳川将軍家と狩野派の繋がりをより強固なものとした人物が狩野探幽(たんゆう)でした。

　狩野探幽は永徳の孫に当たり、京都で生まれます。慶長17年（1612）11歳で家康に拝謁し、13歳の折に2代将軍秀忠の御前で席画を成し、永徳の再来といわれました。元和3年（1617）召し出されて幕府の御用絵師となり、二条城・江戸城といった城郭の障壁画や東照宮縁起絵巻などの制作を行います。また、3代将軍家光は自身が夢に見た祖父家康の姿をたびたび探幽に描かせており、その作品は徳川将軍家および輪王寺に伝わっています。

　その後、探幽の弟である尚信・安信も幕府御用絵師となり、この三家と尚信の家系から生まれた浜町狩野家を加えた四家、さらに土佐派のニ家を加えた六家で奥絵師が形成されました。また、表絵師と称される狩野派諸家もおり、狩野家が幕府御用絵師となると御三家をはじめとする諸藩の多くも狩野派の画家を登用し、狩野派の絵画は全国的な武家絵画となりました。

　徳川幕府歴代将軍は御用絵師に将軍画像を描かせるとともに自身も手ほどきを受け、自筆の絵画を多く遺しています。また、幕府瓦解後も、徳川家では近代日本美術に大きな足跡を残した川村清雄(1852〜1934)をヨーロッパ・アメリカに留学させるなど、絵画への理解は深いものでした。

　このたび展示する徳川将軍家伝来の作品を通し、絵画に深い造詣を持った徳川将軍家の姿の一端をご覧いただけましたら幸いです。

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