日光山輪王寺宝物殿　展示

2011年4月15日（金）〜6月15日（水)
花鳥風月 −徳川家の遺宝−

　古来、人々は太陽や月の運行、一年を通して現れる動植物の移り変わりによって時の流れを知りました。四季の変化が明確な日本では、春には梅や桜を愛で、秋には紅葉狩りが行われるなど、日常の生活の中に自然が強く意識されています。

　花鳥風月は、この自然の美しい風物を表す言葉です。また、そこから自然の風物を観賞し、それらを題材に詩歌や絵画を創作する風流韻事も意味するようになりました。この四季折々の自然の風景は日本最古の和歌集である『万葉集』にも多く詠まれ、鎌倉時代末期には花や鳥の姿が屏風や襖に描かれ始めます。また、室町時代になると大画面の花鳥画が盛行し、ここに室町幕府の御用絵師であった狩野派が大和絵の技法を取り入れ、金碧の花鳥画を確立させます。

　時は織田信長、豊臣秀吉が政権を掌握する桃山時代となり、壮大な城郭や邸宅には豪華な障屏画が描かれ、特に寺社と武家の装飾的障屏画には花鳥画が最も有力な題材として用いられました。また、鑑賞を目的とした小品の花鳥画も流行するようになり、その流れは江戸時代を通じて現在にまで及んでいます。

　徳川将軍家には花鳥をモチーフとした品々が多く伝来します。このたびの展示では花鳥画をはじめ、自然の風物を題材に作られた和歌や将軍手回り品を展示いたします。これらの品々を通し、美しい自然の風景と風雅な趣を感じていただけましたら幸いです。

公益財団法人　�ｺ川記念財団