日光山輪王寺宝物殿　展示

2010年10月7日（木）〜12月7日（火)
徳川家の女性

　天正18年（1590）に江戸へ入った家康は、太田道灌が築いた江戸城を居城とします。その後、慶長8年（1603）に征夷大将軍になると本格的に城郭が建設され、3代家光の時期まで修築や堀の開削が行われました。

江戸城本丸は用途によって表向・中奥（奥）・大奥に区分されており、大奥には将軍正室である御台所や側室が居住していました。大奥の制度をつくったのは3代家光の乳母である春日局とされており、最盛期には3,000人もの女性が生活していました。原則として将軍家以外の男性が大奥に入ることは禁止されており、中奥との境には銅塀が築かれ、中奥と大奥は御鈴廊下によってのみ繋がっていました。

　この閉鎖的な構造や、政治戦略に婚姻が利用されていた点から、大奥に居住する女性には男性主導の政治社会に支配されていた印象が持たれています。しかし、5代綱吉の生母桂昌院は、政治的な人事や生類憐みの令発布にまで係わり、6代家宣の正室天英院も7代家継没後の次期将軍決定に大きな影響力を持ち、吉宗の将軍就任を働きかけたとされています。また、慶応4年（1868）の鳥羽伏見の敗戦後、13代家定継室天璋院（篤姫）と14代家茂御台所静寛院宮（和宮）が徳川家の家名存続に尽力するなど、大奥に暮らす将軍家の女性は時代の要所で政治と関わっていました。

　明治維新後、16代家達夫人となった泰子は、日本赤十字社篤志看護婦人会会長や愛国婦人会理事をつとめます。また、17代家正夫人正子も聾教育振興会婦人部幹事などをつとめ、家達・家正とともに、天璋院の遺志をついで新しい徳川家の家風を堅実に定めていきました。

　このたび展示する徳川家ゆかりの女性が遺した和歌や書画を通して、それぞれの人物に思いを馳せていただければ幸いです。