日光山輪王寺宝物殿　展示

2010年6月10日（木）〜2010年8月10日（火)
三代将軍家光とその時代

　3代将軍徳川家光は、慶長9年（1604）に2代将軍秀忠の次男として江戸城西丸で誕生しました。長兄である長丸が早世したため嫡男として育ち、元和9年（1623）に秀忠から将軍職を譲られます。しかし、実際には大御所となった秀忠が幕政を動かしており、家光主導の政治運営は秀忠の薨去後に始まりました。

　寛永9年（1632）に秀忠が没すると、家光は諸国へ巡見使を派遣し、5万石以上の大名への領知判物および朱印状の給付を行います。また、軍役令の改訂や参勤交代の制度化による大名統制の強化、老中・若年寄をはじめとする幕府職制の整備、日本人の海外渡航の禁止・キリシタン禁令の強化・貿易統制による鎖国体制の完成など、家光の親政期に近世国家は確立されていくこととなります。

　一方、家光は終生祖父である家康を敬愛したことでも有名です。秀忠と母･於江与の方（お江）の愛情が弟国松（松平忠長）へ傾き、家光の地位が危ぶまれた際、家康の意向によって家光の後継が決められたことが所以とされます。この家康崇拝の念は深く、家光は日光東照宮の大造営を行い、自身の死後も家康に仕えるべく、遺骸を日光山に葬るよう遺言して大猷廟が建てられました。

　このたびの展示では、将軍家光の残した記録や自筆の書画を通して、将軍権力が確立される過程とそこに込められた家光の思いの一端を感じていただければ幸いです。