久能山東照宮博物館　展示

2009年4月25日（土）〜6月26日（金）
「徳川慶喜と幕末の静岡」

　十五代将軍徳川慶喜は「最後の将軍」として一般に知られています。征夷大将軍に任命された人物は日本の歴史の中で４７名も登場しましたが、慶喜ほど時代の荒波にもまれ、難局に臨まざるをえなかった将軍は他に例をみません。

　 慶喜は天保八年（1837）9月29日、江戸小石川の水戸藩邸にて藩主徳川斉昭の七男として誕生しました。幼いころから父・斉昭により厳しい養育を受け、その聡明さは広く知れ渡っていたといわれています。慶喜が征夷大将軍という地位に座したのは、わずか1年という短い間でしたが、日本の社会がめまぐるしく転換する激動の時代を生きた将軍として、今日でも多くの人々によって語り継がれています。

　慶喜は将軍を辞任した後、30年間、静岡で「謹慎・隠居」の生活を行うことになりました。この頃の慶喜の生活・暮らしのことを「静岡時代」と呼んだりします。慶喜はこの地で、趣味の狩猟や写真撮影にいそしみ、平穏な日々を過ごしました。

　さて、そのような一見平穏なイメージのある静岡ですが、幕末期にこの地で歴史の行く末をうらなう重要な会議がおこなわれたことは、意外に知られておりません。西郷隆盛と勝海舟との間で行われた「江戸城無血開城」についてはよく知られていますが、その前夜、駿府において「駿府城会談」という重要な会談が行われました。これは「幕末の三舟」として有名な山岡鉄舟と、当時駿府に駐留していた官軍の西郷隆盛との間で取り結ばれたもので、このときすでに�ｺ川宗家の存続と江戸開城に関する取り決めがなされたといわれます。まさにこの静岡（駿府）もまた幕末という激動の時代のひとつの大きな舞台となっていたのです。明治という目まぐるしく日本の社会が変化していく時代を、特別な感慨を胸に秘めながらこの静岡から見つめていたであろう「最後の将軍」の姿に思いを馳せていただければ幸いです。

　平成21年4月